作業療法士として働いていると、「なんとなくしんどい」「職場に行きたくない」と感じることはありませんか?働くうえでストレスを感じることは誰でもあります。もはや自分がストレスを感じているのかわからない人もいるのではないでしょうか。

うまくいかないのは自分のせいかな?我慢してもっと頑張らないと。
こんな風に、ストレスを我慢したり、抱え込むことで心と体がボロボロになる前に適切な対処が必要です。
わたし自身、これまで作業療法士として働くうえで多くのストレスを感じてきました。何にストレスを感じているのかを客観視できず、漠然と職場に行きたくないと感じた時期もありました。ただ、環境が変えたことで自然とストレスもなくなり、前向きになれた経験もあります。
この記事では、作業療法士が抱えやすいストレスの特徴や、続くといずれ心身に不調をきたす避けるべきストレスの内容についてもお伝えします。
ストレスを感じることは悪いことではない

ストレスを感じることが必ずしも悪いことではありません。では良いストレスとはどのようなものでしょうか。
ズバリ、乗り越えることで自分が成長できるストレスです。

患者さんの治療でうまく結果を出せなかった。どうやったらうまくいくのかな。

学会発表の準備が終わらない~。だれか代わりに資料作ってくれないかな。
このように自分ができなかったことができるようになる過程では、多少のストレスがあるものなんですね。また、そのストレスが自分を動かすエネルギーになることも。
自分自身の意思や工夫でコントロールができ、努力すれば乗り越えられるストレスは、自分を動かすエネルギーになります。
注意が必要なストレスとは?心身に現れる変化

同じストレスを感じたとしても、良いストレスになるか悪いストレスになるかは人によって違います。

これまでの経験やその時の状態、価値観が違うから、ストレスの捉え方も人それぞれなんだね。
気をつけないといけないのは、うまく対処できないストレスが長期間続くことです。ストレス障害と呼ばれるさまざまな障害や疾病に進むことが懸念されます。

参考:在外教育施設安全対策資料【心のケア編】 第2章.心のケア.各論. 文部科学省.
ストレスを受けた時にはストレス反応が現れ、それが続くことで心身に様々な不調をきたします。この状態になると仕事を続けることすら難しくなる場合もあります。
作業療法士が抱えやすいストレスの特徴

作業療法士が特に感じやすいストレスについていくつかの論文を参考にお伝えします。
これらのストレスは作業療法士という仕事の特性に関係するものでもあり、日々の臨床の中で、「なんとなくしんどい」と感じる背景にもなっているかもしれません。
経験を重ねたり、作業療法士としての技術を高めることで乗り越えられる部分もありますが、それだけでは難しいストレスも確かに存在します。
同時進行の作業が多い
作業療法士がストレスを感じる要因として、同時に進めたり考えたりする内容が多いことが指摘されています。

例えば、食事場面への介入を例に考えても、1人のクライエントに対して考えることや関係者との調整など、仕事内容は多岐にわたります。これらの内容を同時に進行するという作業療法の特性が心理的な負担になることもあるようです。

新人の頃は、スタッフルームに帰るたびに先輩から、「〇〇さんの食事場面は見てきたの?」「PTに△△は確認した?」と質問攻めにあってたなぁ。
日置久視.井奈波良一:リハビリテーション専門職と職業性ストレスの関係について.http://www.jsomt.jp/journal/pdf/066060459.pdf
他職種とのコンフリクト
Lloyd Cらがオーストラリアで行った研究によると、作業療法士のストレスの要因として他者とのコンフリクトが挙げられています。
意見、価値観、利害、目標などが対立・衝突し、緊張や摩擦が生じている状態のこと。
他者と一言でいっても、クライエントや上司、同僚など関わる人はいろいろいますよね。ただ、この研究では、特に他の専門職との関係がストレスの要因として強調されています。

患者さんのトイレ誘導を始めたいけど、看護師さんにどうやって方法を伝えようかな。忙しそうだしなぁ~。

作業療法士の役割って何なんだろう。
クライエントの生活をより良くしようと思ったら、多くの場合、介助者の協力が必要になります。協力を依頼するときに、その必要性がうまく伝えられるか、相手の状況など気を遣うこともありますよね。
Lloyd C:Sources of stress experienced by occupational therapists and social workers in mental health settings
感情のコントロールが求められる局面が多い
作業療法を行う過程において、クライエントを勇気づけたり、気持ちによりそいながら傾聴したりと、心理的な支援に関わる場面は少なくありません。
また、生活歴や想いなど、クライエントの人生に深く触れる瞬間も多くあります。

ラポール形成って、学生のころから言われてたな。
ただ、作業療法士も一人の人間です。いつも万全な状態でいられるわけではなく、疲れていたり、気持ちに余裕が持てない日もあります。それでも、クライエントの前では自分の感情を抑え、その場にふさわしい感情表現を意識しながらクライエントと関わることが求められます。
このように、自分の感情をコントロールしながら働くことを感情労働といい、知らず知らずの間に心身の負担となっていることもあります。
バーンアウト(燃え尽き症候群)

2018年に行われた日置らの調査によると、作業療法士は他のリハビリテーション専門職と比べてバーンアウト得点が有意に高かったと述べられています。
高い目標や責任感を持って熱心に仕事に取り組んでいた人が、長期間の過度なストレスにより、心身が枯渇したように意欲や熱意を失い、無気力な状態になること。
原因はざまざまですが、良くない職場環境や感情労働と同時に、個人的な要因として「ひたむきさ」や「他人と深く関わろうとする姿勢」が原因として考えられています。

熱心に頑張っている人やクライエントと深く向き合おうとしている人ほど、気をつけないといけないんだな。
さらにバーンアウトの恐ろしいところが、その傾向が強い人ほど、他人に対して共感することが難しくなり、無関心になる傾向にあることです。
作業療法士の特性を考えると、感情労働や個人的な要因に対しては、気の合う同僚と話をしたり、リフレッシュするなど、自分自身に対するケアが必要ですね。
一方で、職場の環境は自分ではどうすることもできない場合が多いです。では、具体的にどういった職場が良くないのか。次の項目でお伝えします。
・日置久視.井奈波良一:リハビリテーション専門職と職業性ストレスの関係について.
・久保 真人.バーンアウト (燃え尽き症候群)
注意が必要な職場の環境(ストレスを悪化させる要因)

上で述べたように、作業療法ならではのストレスは、職務の特性であり、うまく対処することで作業療法士としての技術を高められるという側面もあります。
ただ、職場環境が原因でおこるストレスは自分の力ではどうしようもないこともありますよね。作業療法士としてクライエントに真摯に向き合おうとしている方ほど、職場の様々なストレス要因が加わることは極力避けたいものです。
次のような特徴のある職場はストレスがたまり、身体を壊しやすいと研究がされています。もしも、いまの職場がこれから説明する状況に当てはまっていて、ストレスを感じている場合は、そのストレスから逃げ出すことを考えた方が良いです。

我慢しないで!自分の心と身体がボロボロになる前に、より良い場所に飛び出そう!
労働時間が長すぎる職場

今日も家に帰りついたのが21時を過ぎてしまった。疲れたから、お風呂に入って寝よう。
「月の残業時間が50時間前後」、「帰宅の時間が21時ないし22時を過ぎる」になると疲労、ストレスの蓄積が急激に生じやすくなると言われています。
ただ、これはあくまでもケースバイケースで、人によって生活の状況も違えば、健康や心理の状態も違います。
もし望まない拘束時間が長く、自分の本来やりたいことややるべきことに注ぐべき時間が削れらている状況が続いていると感じていれば対策が必要です。
やらされている感が強い職場

おれの経験に間違いはない。おれの言う通りにやっておけば、間違いないんだよ。
やらされている感を強く感じる職場、つまり裁量権が少ない職場は注意が必要です。
自分の仕事をいつ、どのようにするかを決められない状況はストレスの一因に含められています。この状況が続くことで頭痛、睡眠障害、腹痛、背中の痛みなどの身体症状と関連があると示されています。
職場に求められている取得単位数や担当人数はあると思います。ただ、担当したクライエントの治療方針や治療内容の端々まで指示が入るとつらいですよね。また、休憩の過ごし方や休みの取り方などが自分で決められないのもつらいです。
逆に、職場の方針や働き方など、自分の意見を聞いてくれて、それを仕事のやり方や職場の動きに反映させてくれるような環境はよい職場ですね。
役割が曖昧な職場

資料を作成するように言われたけど、これなんの意味があるんだろう。
具体的な役割やタスク、出すべき結果が曖昧な状況がストレスに関与し、頭痛や消化器症状、疲労感、自律神経系の不調と関連すると言われています。
作業療法士の仕事は、クライエントの状態が良くなったり、感謝の言葉をもらえたりと、自分の仕事の成果を実感しやすい職業です。
一方で、現場では別の種類の「結果」を求められることがあります。たとえば単位取得です。もちろん、経営や制度の視点から必要なことではありますが、「とにかく単位を取ってほしい」とだけ言われても、「何単位とればいいの?」となってしまいます。

どのくらいを目指せば良いのか?具体的な工夫は?
これがわからないと、目標がはっきりしないまま仕事をすることになるよ。
また、目的がよく分からないまま会議に出席したり、何のために使われるのか分からない資料を作成したりすることもあるかもしれません。こうした場面では、「自分は何を期待されているのだろう?」と感じやすくなります。
このような状況だと失敗を予測したり、あらかじめ対策を考えたりすることができません。その結果、常に手探りで仕事をすることになり、知らず知らずのうちに緊張した状態が続いてしまいます。
忙しすぎる職場

やらないといけないことは沢山あるけど、何から手をつけたらいいんだろう。全然時間が足りない。
この忙しすぎるという状況は、論文では作業負荷が高い職場と表現されており、決められた時間にやるべき作業の量が多くて頭がパニックになっている状況です。
常に時間がない。とにかく忙しい。そんな感覚が続いている状況は吐き気や下痢といった胃腸症状や睡眠障害が現れやすいと言われています。
決められた訓練時間に加えて、書類業務や他職種とのやり取り、カンファレンスの準備などやらないといけないことは沢山あるとは思いますが、そういった作業に必要な時間が十分に確保されていることが望ましいですよね。
人間関係が悪い職場

上司に相談したいけど、怒られそうで相談しずらいな…
多くの人が抱えている問題ではないでしょうか。
専門職である作業療法士として成長するためには、多少の批評や批判はうけることもあると思います。
ただ、以下に示すような状況が続くことは避ける必要があります。
- 言い争いなどで関係がギクシャクしている状態
- 否定的な言葉や嫌味、皮肉を言われる
- 無視される
- 相談しづらい雰囲気があり、困ったときに助けてもらえない
誹謗中傷のように直接的な攻撃は分かりやすいですが、評価に不公平さを感じていたり、必要なサポートが得られなかったりする状況も人間関係が悪い状況に当てはまるんですね。
このようなネガティブなコミュニケーションが続くと、頭痛や胃腸症状、睡眠障害と強く関係していることが示されています。
上司や同僚、関係者との関係でこのような状況が続いている場合は、その関係とは距離をとったり、環境を変えることをおすすめします。
上司によって指示が異なる職場

結局どの人が言っていることが正解なの?
こんな風に感じた経験はないでしょうか?
複数の上司や先輩と関わる職場では、それぞれの方針や考え方の違いから、指示の内容が食い違ってしまうことがあります。
- Aさんから言われた通りにやったのに、Bさんからは違うやり方を指摘される
- 上司ごとに求めていることが違う
- 誰に従えばよいのかわからない
このような状況を「役割の衝突(役割葛藤)」といいます。
また、指示を出す人が決まっていなかったり、場面によって言っていることが変わるといった一貫性のなさもストレスの要因になります。

この前と言ってること違うじゃん!っていうモヤモヤした感じは、想像以上にストレスになるみたい。
このような状況が続くと、常に「これでいいのかな」と不安を抱えながら仕事をすることになり、論文では、消化器系の不調と関連があると報告されています。
もしも、このような状況に悩んでいるのであれば、1人で抱え込まず信頼できる人に相談したり、環境を見直すことも大切です。
やりたいことができない職場

あの方法で患者さんの治療をしたらもっと良くなるはずなのに、いまの環境じゃ難しい…。
このように、職場の物理的な制約や方針が理由で、自分のやりたいことができない状況が起こることがあります。
このような状況を「組織的制約」といいます。自分の中では「これをやればうまくいく」と答えが出ているのに実行できない状況が続くことで無力感やストレスに繋がります。
仕事上の行動の制限はもちろんですが、学びたい内容があっても、時間や環境の制約によって勉強できない状況も広い意味では組織的な制約の1つと言えます。
論文では、こうした状況が続くことで、疲労感や消化器症状と関連していると述べられています。

本当は急性期で働きたいと思いながら、療養病棟で働いた3年間は自分に自信が持てなかったな。すべてが悪い思い出ではないけど。
Nixon, AE, Mazzola, JJ, Bauer, J., Krueger, JR, & Spector, PE (2011). 仕事は病気を引き起こすか?仕事のストレス要因と身体症状の関係に関するメタ分析. Work & Stress , 25 (1), 1–22. https://doi.org/10.1080/02678373.2011.569175
ストレスへの対処法(自分でできること・環境の見直し)

ここまで、作業療法士が抱えやすいストレスや注意が必要な職場環境についてお伝えしてきました。
では、こうしたストレスにどのように向き合えばよいのでしょうか。
大切なのは、「自分の力で変えられるもの」と「環境を変えないと難しいこと」を切り分けることです。
まずは、自分自身でできることは以下のようなものが挙げられます。
- 信頼できる同僚に話す
- しっかりと休息をとる
- 自分の状態を振り返る
- 作業療法の技術を向上させる

とくに作業療法士に特有のストレスに関しては、作業療法士としてすべきことがはっきりしたころから対処しやすくなった気がする。そのためには経験を積んだり、勉強したりと努力も必要だと今は思う。
次に、環境に目を向けることも大切です。具体的には以下のような方法があります。
- 上司や他職種に相談する
- 配置や働き方の調整を検討する
- 転職する
このように我慢すること以外の選択肢もあらかじめ持っておくことが大切です。
まとめ

ストレスを感じることは悪いことではありません。
ただ、それを我慢し続ける必要もありません。
自分の状態に気づき、必要であれば環境を見直すこと。それが作業療法士として長く働き続けるために必要なことです。

あなたらしく、作業療法を実践できる未来を応援しています!
最後まで読んでいただきありがとうございました。


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